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Top Page > ラピスラズリ(連載中) > ラピスラズリ 235 うつつ

ラピスラズリ 235 うつつ

「私にも怒りたかったと思うけど…
相手に、すごく怒ったの。
別居してるけど、奥さんがいる人だから。

でも、私には産まない選択肢がなくて…
自分で養っていけるかなって
甘いかもしれないけど…。

あ、ごめんね。暗い話して」


「…ううん」


栞ちゃんの笑顔が
どこか寂しげに変わるけど
すぐに前向きな言葉が出る。




「働いた分の貯金はあるから、
出産までは実家で過ごすつもり。
生まれたら、また働くよー」


「そっかぁ…」

「るりちゃんはどんな感じー?」

「あはは、私は……何もないよ。
仕事してるだけ……」





何も言えない。


栞ちゃんが、これだけ全部話してくれても、
打ち明けられないような恋愛なのだと
思い知る。



ふたりきりでいると
何もかも手放して、ふたりでいたいと思うのに
現実に戻ると、すべてが霞んでしまう。


栞ちゃんと同じ状況になった時、
彼女みたいに笑顔でいられる?

栞ちゃんのような勇気は、
私には……



そこへ、匠君が戻ってきた。

「ただいま。すげー混んでた」

「お兄ちゃん遅すぎ」

「だから混んでたんだって」


プシュっといい音をさせて
缶ビールが開けられた。

喉を鳴らして飲む匠君。

栞ちゃんも、話題を変え
三人で昔話に花を咲かせた。


取るに足らない
昔の思い出を語りながら
心の中では冷静に自分を見つめていた。

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