Clarice Fantasy

大人の女性向け恋愛小説置き場。たまにR-18
           

Top Page > ラピスラズリ(連載中) > ラピスラズリ 221 書庫

ラピスラズリ 221 書庫

廊下つき当たりの書庫。
手前にはトイレがあり、人通りはある。


萩原さんは飄々とした様子で
ドアを開けてくれた。


「ありがとうございます」


奥まで入り、
重い棚をスライドさせ、
バインダーをひとつずつ置く。

萩原さんは入口に立って、
廊下を見ながら
私の作業を待っていた。


「? ありがとうございます。
戻られないんですか?」


もう一度お礼を言うと、
彼が慌てて書庫に入ってくる。


「えっ?」

「ちょ、黙ってて。
めんどくせぇから」

「え?」


廊下に、ヒールの音がカツカツと響く。

誰か来る?


「な、何なんですか?」

「………」


萩原さんは答えてくれず、
息をひそめている。

なんか、近いな…。

すぐそこに萩原さんの体がある。
こうして見るのも久しぶりのような気がする。



ヒールの音が書庫前に近づいてきた。
が、すぐにまた、遠のいていった。



「……はー。行ったかな」

萩原さんがほっと胸をなでおろした。

誰から逃げているのか、私も
心当たりがないわけではなかった。


「花沢さんでしょ。
つきあい始めたって聞きましたよ」

「つきあってねえよ」

「…じゃあ、つきあってることになってますよ」

「あーそう。誰から聞いたの」

「花沢さんご本人です」


萩原さんが、静かに私を見る。


「俺、田島みたいに、
別れたからってすぐに
次の女に行けねぇから。」


そう言って、書庫から出て行った。

にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ

関連記事
該当の記事は見つかりませんでした。