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ラピスラズリ 206 欲

くるりと振り向いた田島さんは、
私の布団に入ってきた。


「寒い。布団入れて」

「エアコン効きませんね」

「雪もちらついてたしな」


体を重ねたことなんて
大したことじゃないかのように
雑談が始まる。


「瑠璃は眠くないの?」

「いえ、そろそろ帰ろうかと…」

「ちょっと寝て行きなよ」

「……じゃあ、ちょっとだけ」


ああ。
往生際悪いな。

田島さんが寝たら、帰ろう……。


そう思っていると、
田島さんが少しだけ
私に体を寄せる。


「瑠璃」

「はい?」

「ごめんな」

「……何がですか」


身構えながら理由を聞くと、
田島さんの指が私の指に絡む。


「……もうちょっと、待ってて」


田島さんは、そのまま
寝息を立てて寝てしまった。


「何を待つんですか……」と
聞いても、返事もなく。


寝ている頬にキスをして、
重い体を起こした。


離れたくない思いを振り切って
身支度をして
音を立てないように
マンションを出た。


待っててなんて言わないで。

本気にして、
ずっと、待ってしまうのに。


家に帰ると、
夢から現実に戻ったようで、
涙が止まらなかった。


私は今日のあの時間を、
幸せな思い出にできるのかな。

そうできる人なら、
最初から
足を踏み入れないんじゃないかな。



今残っているのは、
幸せな思い出じゃなくて
彼ともっと一緒にいたかったという思い。

そして、この先も一緒にいたいという、欲。

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