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ラピスラズリ 192 冷たい手

田島さんは何も言わずに
私の手を握る。


「……冷たい手だな」


これだけ寒いと、手も冷える。


田島さんの手は温かい。

今、この時だけでも、
この温かさが自分のものになるのなら
それでもいいかもしれない。


バカでも、いいかもしれない。


田島さんは私の手を
もう一度ぎゅっと握ると、
そのままコートの中に入れた。



無言で歩き出す田島さんに、
覚悟を決めてついて行った。




ついたのは、歩いて数分のマンション。

「おじゃま…します」

田島さんは、うんと頷いた。
それだけで複雑な胸中を読み取れた。

パンプスを脱ぎ、家に上がる。


田島さんの部屋は、
ほとんどモノがなかった。

ベッドと、小さなテーブルとイスが
置かれている部屋。

ここで仕事してるのかな。

小さなキッチンには
小さな冷蔵庫があるだけ。

あんまり見ちゃいけないと思いながら、
視線のやりどころが見つからなくて、
つい見てしまう。


全然しゃべらない田島さんは、
コートとジャケットを脱ぎ、
クローゼットに掛けていた。


そして、目が合った。

その表情は、明るくない。



「田島さん……」


「……ずるくてごめんな。
何も言ってあげられないし
何の約束もできなくて」


田島さんは、
ベッドに腰を下ろした。

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