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ひみつのシンデレラ【9】シンデレラの靴

倉庫到着。

たまに残って作業している人もいるが、この日は誰もいなかった。
桜木さんが通路を先に進む。


最低限の蛍光灯がついていて、天井はグレーのコンクリート剥き出し。
その天井近くまで高さのある広い棚が立ち並び、その中に整然と在庫が並べられている倉庫。

狭い通路にはところどころ脚立が置かれている。

桜木さんは棚に潜り込み、この前私が開けたその箱を取ってくれた。

「一応ここに、袋も置いてたんだけど」

取りだしたのは、デパートの紙袋ではなく、桜木さんのメーカーブランドのショップ手提げだった。
オリジナルがあるんだ。ほしい…


「もうフィッティングした?」と、ケースからスマートにパンプスを出す。

した、と答えようとするのと同時ぐらいに、桜木さんが私の前に跪く。
そして私を見上げ、「履いてみて」と言った。


わ…

心臓が…暴れるように打ってる。


足を入れると、私の甲と踵に、桜木さんの指が触れた。

「おー。ぴったり。かわいい」

私の足元から立ち上がり、私を見て目を細めて笑う。恥ずかしくて顔を見られなかった。

「桜木さん、ありがとうございます。買取したんですよね?お代お支払いします」

「いいよ。どうせ卸価格なんだし。伊原ちゃんこれかわいいって言ってたなーって思い出しただけだから」

またそんなことを言う。そしてあっさりドキドキしている私。

「次はちゃんと買います」

「無理しないでね。せっかく稼いだバイト代、よく考えて使って下さいね」


あれ?意外な返事。

売りたいわけじゃないのか…セールスさんなのに…
本当にプレゼントなんだ。

実際、桜木さんのメーカーのものはかわいいのが多かったし、よく売れていた印象がある。
先日早見さんに秋冬物のカタログを見せてもらって、冬にはブーツが欲しいと思っていた。

パンプスを脱ぐ時に、少しよろけて腕が当たった。

「大丈夫?」

「は、はい…」

近いところにいるから、すぐ当たってしまう。

桜木さんはまたケースに靴を梱包して、ショップの手提げに入れてくれた。
「どうぞ」と渡され、両手を差し出して受け取る。

「桜木さん、本当にありがとうございました」

「いえいえ。これだけ喜んでくれたらあげた甲斐あったよ」

「感激です」

「みんなにはひみつね」

そう言う桜木さんに、笑顔で頷いた。

そうして、神様のごほうびのような時間が終わり、二人で倉庫を出た。

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