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ひみつのシンデレラ【1】ポエマーなシンデレラ

好きな人がいます。


年上で、優しくて、
思わせぶりで
笑うと目が細くなって
話すときは距離が近くて
人の目をじっと見る。

そんな彼。


これ以上好きになりたくないのに
彼の姿をつい目で追ってしまって
目が合うと嬉しくて
寝る前には思い出して切なくなる。

そんな日々。


彼を好きなのはだれにも内緒。




友達にも、彼にも



彼の、きれいな彼女にも。











「ねえ。伊原さんって就活終わったの?」


桜木さんに、背後から突然声を掛けられて驚いた。


「は、はい。一応1社内定をいただいて…」


ドキドキしながらしどろもどろで答える。


「すごいね。このご時世に。販売?」
「いえ、事務です…」
「そうなんだ。販売興味あるかと思ったのになー」


桜木さんは笑いながら腕時計を見て、閉店まであと3時間か…とつぶやいた。

ドキドキは、すぐにはおさまらなかった。




「これの23.5cmありますか?」

お客様が、ディスプレイされているキャメル色のパンプスを指差す。

在庫を調べる桜木さんに品番を聞き、私は売場の裏まで走った。
天井の高い倉庫の棚を上って商品を取り、急いで売場に戻って、桜木さんにケースを手渡す。

「ありがと」

桜木さんは笑顔で受け取ると、お客様の前に片膝をついて箱からパンプスを取り出し、床に揃えて差し出した。



琥珀色のスツールに掛けているお客様が、爪先をパンプスに入れる。




私、伊原真希は、デパートで婦人靴販売のアルバイトをしている大学生。
桜木さんは婦人靴メーカーの社員。私より5歳上の27歳。


この光景を見るたびに、シンデレラに靴を差し出す王子様みたいだと思っていた。
我ながらメルヘンチックで幼い発想だけど…





お客様は、そのパンプスをいたく気に入って下さり、お買い上げとなった。

「伊原さん、取りに行ってくれてありがとうね。棚散らかってたでしょ。まだ納品済んでなくて。ちょっと行ってくるね」

桜木さんは納品作業が残っているらしく、その後は売場から離れて倉庫に行ってしまった。
在庫取りに行くだけでこんなに笑いかけてくれるなら、喜んで取りに行くよ…と、心の中で思う。

販売職の桜木さんは、背も高くおしゃれでいわゆるイケメンと呼ばれる類の人。
笑顔でお礼を言われただけでドギマギする私とは、世界が違う。

少し話せただけで、その日は一日幸せな気分だった。

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