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ラブホリック 402-お母さん、ここにいるよ。

内診台に座り、ひたすらドクターを待った。

新たな出血はなかったが、脱ぎ捨てた衣類には
さっきの様子が残っている。

どうかお願い、と祈る気持ちでいっぱいだった。


「お待たせしました、赤ちゃん見てみましょうね」


物腰の柔らかいお若いドクターがやってきた。


出血時の様子や具体的な症状など話しながら、
ドクターと一緒に画面を見ながらエコーが始まった。




「…あ。いるいる!」




ドクターの声がして
信じられない気持ちで画面を食い入るように見た。


ドクター、看護師さん、わたしで
画面に集中していると
正面を向いている赤ちゃんが
短い両手をパタパタしていた。

そのしぐさに思わず3人で笑った。


「おーい、いるよーって言ってるみたいだね」
とドクターが言う。




赤ちゃんは無事だった。




診察中には出血している箇所はもうなく、
先程の出血はおそらく胎盤が作られている
場所からのもの。

しかし、原因もわからないし、
完全に防ぐ手立てもないから、
気にやまずに無理をしすぎずに
過ごして下さいとの話があった。


そして、着替えを終え帰ろうとすると、
ドクターがバタバタと戻ってきて
「これ!おみやげです」とエコー写真を一枚くれた。



処置室の外に出ると、
矢野さんがうつむいて座っている。

「赤ちゃん、無事だったよ」

「うん。笑い声聞こえてたから…」

エコー写真を見せると、
「はは。宇宙人みてーだな」と笑って、
矢野さんはーっと息を吐き、またうつむく。

その後、一度だけ鼻をすすり、
わたしに顔を向けないようにして
ゆっくり歩きだした。


「おまえ、歩いていいの?」

「あ、うん…無理しなかったらいいみたい」

「よくわかんねーな…」


その時、わたしのお腹が鳴った。


「今日は食えそう?」と矢野さんが微笑む。

「わかんないけど、コンビニのサンドイッチ食べたい…」

「おう。買ってくるよ。何でもするから言え。
 オレにはこんなことぐらいしかできねーし」



いつも自信満々な矢野さんが小さく見えた。

すごい心配したんだろうな。
そう思うとまた涙が出てくる。

何のサンドイッチか聞かれたけど、
わたしが返事をせずに泣いてるから
矢野さんは振り返って驚いていた。

「泣いてんのかよ!もう、泣くな」

「だって…」

ほっとしたら、泣けて仕方なかった。



赤ちゃんが生きてた。

動いてた…

良かった…本当に



矢野さんはわたしの頭を何度も撫でていた。

ずっと続いていた少量の出血は
この日を境になくなった。

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