Clarice Fantasy

大人の女性向け恋愛小説置き場。たまにR-18
           

Top Page > ラブホリック > ラブホリック 339-辞令日の夜。

ラブホリック 339-辞令日の夜。

目の前の矢野さんは、
今日はお品書きを見るのもそこそこに
オーダーを済ませ、じっとわたしを見る。

「結構泣いた?ちょっと目ー腫れてる」

「うん。泣いた。今こそメガネかけた方がいいかな」

「まぁ、もう見てるのはオレだけだから、
 なくてもいいんじゃない」

視線が絡むように合う。
矢野さんは何かを思っている。

しばらく離れることか、
わたしが今日橘さんとランチに行ったことか。

何か、話したい事はあるけど、
口に出さないような雰囲気。

お互い、遠慮しながら食べ終えて店を出た。


マンションまで歩く間、どちらからともなく手をつなぐ。
ぎゅーっと握ると、矢野さんも握り返す。

さらにぎゅーーっと手を握ると、
「いてーよ」とわたしを抱きしめた。

いつもなら、わたしが嫌がって離れて、
笑い合う場面。

この日は、わたしも矢野さんを抱きしめた。

矢野さんは
何も言わずわたしを抱きしめる。

人が通り過ぎたので、ゆっくりと体を離した。






家に着く直前、橘さんの話を切り出した。


黙り続けるのも
どうにもおさまりが悪かったし
お互い、何かを抱えてる状態から
脱却したかった。

「小林部長が、橘…菊池さんとわたしが似てるって。」

そう言うと、矢野さんは眉をひそめて首を傾げる。

「似てるか?」

「似てないよね。
 橘さんのほうが断然かわいいもんね。敵わないよ」

あ。可愛くない言い方をしてしまった。
矢野さんは、ふっとわたしを見る。


「…おまえ、何気にしてんの」

「………別に。」

「バカか」


その「バカか」が、
本当に冷たく感じて悲しかった。

どうせバカだよ。


わたしが先に家に入り、靴を脱いで、
振り向かずにお風呂に直行した。

お湯を張りながら、涙が止まらない。

送別会で散々泣いたから、
涙腺はまだ緩んだままで
すぐに涙が出てしまう。

手の甲で涙をごしごしと拭き、立ち上がると
矢野さんがバスルーム横の洗面台に手をついて
こっちを見ていた。

動けなくて、その場に立ちすくむ。

にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ

関連記事
該当の記事は見つかりませんでした。