Clarice Fantasy

大人の女性向け恋愛小説置き場。たまにR-18
           

Top Page > ラブホリック > ラブホリック 314-ケイゴさんの懐かしい声。

ラブホリック 314-ケイゴさんの懐かしい声。

しばらく沈黙があったあと、ケイゴさんが
『そっか…』と言った。



息苦しい沈黙。


その後、ケイゴさんが『今日、予定日だよ』と言った。


何のことかすぐに分かった。
わたしも、思い出していたから。


あの赤ちゃんが育っていたら、
この日が出産予定日だった。


「…忘れてないよ。ずっと」

『うん。おれも』


それ以上、言葉が出なかった。


「…外だし…もう、切るね。じゃあ…」

『うん。元気そうでよかった。じゃあね』

「うん。ケイゴさんも、元気で。」


震える手で通話を切った。
冷えた空気の中で白いため息が出る。

ケイゴさんの電話は、わたしの心を暗く覆った。


ケイゴさんは、どういう思いで電話をくれたんだろう。




ケイゴさんを案じる気持ちと、
放っておいてほしかった気持ちが交錯し、
苦しかった。


最後は突き放すようにしてしまった…

でも、優しくするのも違う…

そうして、罪悪感がまた増える。


電話に出なければよかった。
不注意な自分にも嫌気がさした。

もう一度ため息をつく。



赤ちゃんのことは忘れない。

でも、私にとって、
あの出来事はもう、ケイゴさんと
分かち合うものじゃない。

ケイゴさんとの関係は、
もう過去のことなのだ。

夏のあの出来事は
わたしの中だけの出来事として
ずっと持っておくのだ。



夏のあの時の、
二人の心が寄り添っていたあの時間は
もう取り返せない。

ケイゴさんが、どういう思いを持って
言ったのかはわからないけど、
彼の口から赤ちゃんの話を
出されたことに、正直嫌悪感を抱いた。

…あの後、
ケイゴさんは一気に不安定になり、
埋めがたい溝ができて
結局別れに至ったのに。




今さら…





ケイゴさんとは、もう終わっている。




「寒っ…」

気づけば体が冷えていた。
3月と言えど、晩は寒い。

急いで家まで帰った。


ご飯を食べて熱いお風呂に入る。
それでも少し寒気がする。

風邪かな。
今風邪をひいたら、年度末なのに最悪だ。

ベッドで、布団と毛布にくるまって
矢野さんの帰りを待ちわびる。

営業部の話もしなきゃ。

それより今は、顔が見たい。
はやく、帰ってきて…

にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ

関連記事
該当の記事は見つかりませんでした。