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ラブホリック 176-あの日の夜のこと。

矢野さんのホテルへ。

誰かに見られていたら、
その時はその時だと思った。

部屋に入ると、矢野さんは、
わたしの腕を掴んでいた手を離した。

バッグをデスクに起き、
わたしに背を向け、ベッドに腰掛けた。
はーっと息をついて、ネクタイを緩めている。

わたしも、荷物を床に置き
ミネラルウォーターを取り出す。

「座れば」と言われて、
矢野さんの右隣に座り、それを飲んだ。





「おまえ、何こんなとこまでついて来てんの…アホか」

そう言いながら、
矢野さんもペットボトルを取り出す。

「否定のしようもありません…。アホです」

わたしが返すと、
矢野さんがふっと笑う。

「まぁオレもアホだけどな」

「そうですよね」

「おまえほどじゃねーよ(笑)」


今思い返しても、軽率だったと思う。
自分の感情を優先してしまった夜。


「あいつと結婚するんだろ?」
と矢野さん。

コクンと頷くと、
矢野さんはベッドに横になった。

「きっついなー…」

涙が出そうになるが、堪える。
わたしは泣く立場にない。

そんなわたしの顔を見て、
矢野さんが吹き出した。

「なにそれ。変な顔。」
と笑う矢野さん。

言葉とは裏腹な優しい表情だった。




二人の間に言葉がなくなる。

話したいことは、たくさんあったはずなのに。




沈黙の中、わたしのスマホが鳴り出した。
ケイゴさんからの着信だった。


矢野さんは、立ち上がりながら
「電話、出れば」と言い、
携帯と財布を持って部屋を出て行った。

その後ろ姿を見ながら、
複雑な心持ちで電話に出た。



その時、ケイゴさんと
何を話したかあまり覚えていない。

内示の話もしなかったと思う。
当たり障りない話をした。

ケイゴさんは、いつもと変わらない。
申し訳なさで胸が詰まった。

何やってるんだろう…と
自分が情けなくもなった。


ケイゴさんがもし、あの連休の時に
後藤さんと何かがあったとしても、

わたしには
もう何も言う権利はないと思った。

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