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ラブホリック 174-寂しいって言えない。

わたしが黙っていると、矢野さんが
「そんな顔すんな」と言った。


「…わたし、どんな顔してますか?」


歩きながら、矢野さんがわたしの顔を
まっすぐ見つめる。

あまりにもまっすぐで、目を逸らすと
矢野さんは、少し戸惑い気味に


「…オレと離れたくない、って顔。」

と言った。




「…そうですか。」

「否定しねーのかよ。(笑)」

「………」



だって、当たってる。

自分の立場を弁えずに言うと、
矢野さんと離れるのは寂しい。


それを口にすることはできなかった。



コンビニに寄り、ホテルの前に着いた。
今日は矢野さんは違うホテルを取っていた。

「じゃあな」と手を上げて、
矢野さんは横断歩道を渡っていく。

そんな後ろ姿をずっと見ていた。

矢野さんは、渡り切ったあと、
こちらを振り返り
立ち止まって見ていたわたしに、
また手を上げた。


矢野さんも立ち止まり、
ポケットから携帯を出す。



わたしのスマホが鳴り出した。
横断歩道の向こうにいる
矢野さんの着信だった。


『おーい。早く戻れ。
 ねーちゃん一人でいたら、
 酔っ払いのオッサンに絡まれるぞ』

「はい。矢野さんがホテルに入ったら、
 わたしも入ります」

『………おう。入るから、おまえも入れ』

「はい…」


我慢していた寂しさがこみ上げる。
鼻の奥がツーンとして、
視界が涙でぼやけてきた。

今生の別れじゃあるまいし
何を泣くことがあるのか…

と、今なら思うけど、

この時はとにかく
切なくて寂しくて仕方なかった。


鼻をすすると、
矢野さんが怪訝そうな声で言った。

『……まさか泣いてる?』

「全然泣いてませんよ」涙声で答える。

『嘘つけ!もーおまえ……』

矢野さんは、はーっとため息をついた。
信号が青になり、矢野さんが戻ってくる。


涙を流すわたしの顔を見て、
「そんな顔見たら帰れねーじゃん」
と言った。

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