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ラブホリック 088-本社出張の夜。

電車で帰る清水さんは駅へ。
矢野さんとわたしはタクシーに乗った。

ドアが閉まると、矢野さんは
こちらを向かずに窓の外に視線を遣った。


さっき、清水さんに言われたことで
少しだけ意識してしまう。

ケイゴさんと正反対の性格だけど、
この人にも、どこか不器用さを感じる。

矢野さんが泊まるホテルの前で
タクシーを降りた。

わたしの宿泊ホテルは、その向かいの
横断歩道を渡ったところにあった。

定例会議のために、
宿泊出張している社員は他にもいて
毎月この日は、この辺りのホテルは
うちの社員だらけ。


信号を待っていると、矢野さんも
隣で立ってうつむいていた。

「あ、ホテル戻ってくださいね、すぐそこだし…」

と言うと、矢野さんは顔を上げて言った。


「……ちょっと話したいんだけど、いい?」



話したい…?

何を?


自分の心臓がドクンと動くのがわかった。
心拍数が上がる。

どうしようか身構えていると、
矢野さんが突然笑い出した。

「ははは!すげー顔してる」

「えっ!?」

「警戒してるだろ。」

…まあ…それは…してる。


矢野さんは、その場で話し始めた。

「ちゃんと謝ってなかったなと思ってさ。
 ごめんな。異動前…大人げない態度で」

ああ…
その話か…

「…普通に無視してましたよね」

「うん。してたな。どうしていいかわからなかった。フラれたし」

「……」

「ななちゃんと、こうやってまた
 話せるようになって、ホッとしてる」

「…はい。」

「うん。(笑) それだけ。」

「……はい。(笑)」


釣られて笑うと、矢野さんが片手で
わたしをぐっと抱き寄せて
耳元で「おやすみ」と言った。

矢野さんの香水の匂いがした。


ほんの一瞬の出来事。


すぐに信号が青になり、矢野さんが手を離す。

急いで横断歩道を渡り、振り向くと
もう矢野さんはいなかった。



…キスされるかと思った。

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