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ラピスラズリ 306 写真

田島さんのマンションとは違う。
ダイニングに下げられたおしゃれなライトや、
キッチンに並ぶ調理機器。
どこもかしこも、奥さんの趣味が入っている。

今座っているこのテーブルも…奥さんの趣味なのかな。


この二人は夫婦で、それは当然のことで。

私は、なんてことをしてしまったんだろう。
浅くなる呼吸を整えようと、口元に手を当てる。


「見て」

奥さんが、テーブルに一枚の紙を差し出す。
私と田島さんが、マンションに入って行く写真。

私が田島さんに笑いかけていて、
田島さんもそれに応えるように振り向いている。


こうして見ると……
やましい二人にしか見えない。

彼を尊敬し、ときめく気持ちや
制限された状況の中で、
彼が私を大事にしてくれた気持ちが塗りつぶされて
男女の欲が滲みでたように見える。

私の田島さんへの思いは、人から見ると
こんなに、いかがわしいものなのか。



「興信所使ってみたら、すぐ撮れたわ。
隼人にはこの写真見せてないの。
あなたに見せてからにしようと思って」


こんな写真を見た奥さんの気持ちを思うと、
何も言葉が出ない。

青ざめている私に、くすりと笑いながら
奥さんはさらに写真をつきつける。

「……持って帰る?データはあるから、
持ってってもいいわよ」

「いえ……」

今からでも土下座して、謝らなければいけないのだろうか。
けれど、体が動かない。

奥さんの微笑みが怖い。


最初こそ、不思議なほど静かに会話が進んでいた。
いつからつきあったのかとか、
彼のどこが好きなのかとか。


奥さん――佑香さんは、
田島さんと会話はないようで、
田島さんが帰っていないのも
嘘ではないようだった。


佑香さんはきれいにネイルされた指先で
カップを持ち上げ、ブラックコーヒーを飲む。

甘くないコーヒーが好きなんだな。
田島さんと一緒だ。



静かな会話が一変したのは、
私が転勤の話を切り出した時だった。

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