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ラピスラズリ 305 くもり空

翌日、田島さんは終日外出だった。
顔を合わせないで済んでよかった。

できれば、転勤まで会わないまま過ごしたい。
彼を好きだった気持ちが薄らぐまで。


定時を過ぎ、仕事を終えて、
いつものように退勤した。

雨が降っているので、
傘を差そうとくもり空に向ける。


ちょうどその時、女性に声を掛けられた。


「山下瑠璃さんですか」

エントランスの脇にきれいな女性が立っていた。
スタイルが良くて、体のラインの出た服を着て、
私をまっすぐに見つめ、瞳を逸らさない。


……まさか。

そう思った時、彼女の方から正体を明かした。


「……田島隼人の妻です。少しお話できますか」


その途端、頭が真っ白になり、
意識が遠のきそうにぐらりとめまいがする。


「……はい」

田島さんの奥さんはタクシーを呼び止め、
私に乗るように言った。


行き先は、田島さんの自宅。
雨足は強くなり、傘を差しても
肩が濡れた。

「……入りなさい」


冷たく、厳しい口調で、
奥さんは玄関のドアを開けた。


コーヒーを淹れてくれたが、
口をつけることはできなかった。

そんな私を見て、奥さんは
嘲るように鼻で笑った。



本当に……
きれいな顔立ちをしている。

マリさんも、
佐伯さんの姉であれば美人だろう。

彼女たちに比べ、華のない、
地味な自分が恥ずかしく、
何より、女としての格が違う。


立場が……違いすぎる。

沈黙の時間に押し潰されそうだった。

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