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ラピスラズリ 239 伝えられず

田島さんの顔を見られず
手元だけ見る。


「話?」

「はい、ここでは話せないので…」

そう言うと、
田島さんが拳を口元にやるのが見えた。

「俺もあるよ。ここでは話せない話」

「え…」


な、なんだろう…

なにか、
田島さんの環境が変わった、とか?



すごく気になるけど、
私だって伝えなきゃ。




すると、田島さんが
私の後ろに視線を移した。

「おはよーございまーす!
おふたり、早いねー!
一緒に来たの?」

岡田さんが出社してきた。




「あ、いえ、一緒には…
ちょっと、飲み物買ってきます」


財布だけ持って、事務所を出る。

エレベーターはなかなか来ない。



はあ。


何だろう。田島さんの話。


………。




“もう終わりにする”って言う気でいるのに。

まだ、何かあわよくばを期待している自分に気付く。




エレベーターが到着すると同じぐらいに、
事務所のドアが開く音が聞こえた。


「あ。山下さん、まだいたの」

田島さんは、何もないかのように
普通に隣に立っている。


「はい。エレベーターがなかなか来なかったので…」

「まあ、朝は混むしね」

おりる人たちを待ち、
からっぽになったエレベーターに
ふたりで乗り込んだ。



少し離れて後ろに立つ田島さんは、
何も話さないし、
私も振り向けない。


息苦しい。

逃げ出したい。


こんなんじゃ、二人で会ったところで
何も言えそうにない。




「……山下さん。もう、いいよ」


「えっ?」


「ごめんな。もう、連絡しないからさ。
そんな顔見てたら、……わかるよ。
山下さんが何を思ってるか」


「………」


ポーン、と到着のブザーが鳴る。


「今まで、ごめんな」


ドアが開き、
先に田島さんが降りる。


彼は、申し訳なさそうな顔をしながら
一度だけ振り向いたけれど、
その後は振り向くことはなかった。

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