Clarice Fantasy

大人の女性向け恋愛小説置き場。たまにR-18
           

ラピスラズリ 107 全力疾走

その日の仕事を終え、会社を出る。萩原さんのセミナーもそろそろ終わるはずで終わったら、連絡が来る手筈になっている。メイクを直して、いつもと反対方向の電車に乗った。こっちはセミナー会場もあるけれど、萩原さんの家の方向でもある。私は、彼の事を何も知らない。実家暮らしなのか、一人暮らしなのか、それすら知らない…駅に着き、携帯が鳴った。萩原さんも終わったらしく、とあるビルまでおいでと言われた。セミナー帰りの...

ラピスラズリ 106 どれを取るか

「辞めても、飲みに行こうね。るりちゃんとは、これからも繋がってたいなーと思うから」岡田さんが寂しげに微笑んだので切なくなった。「行きます!絶対に!」「よかった!職場のつきあいだと割り切ってるなら私の気持ちなんて暑苦しいかなと思って」「そんなことないですよ、岡田さんは…」私を心配して、一番優しくしてくれた人。お別れを思うと寂しくなり、目が潤んでしまった。「えっ、るりちゃん泣いてる?」「…ちょっとだけ…...

ラピスラズリ 105 一度

漆黒の瞳で萩原さんが私を見つめた。茶色がかっている田島さんの瞳とは違う、深く吸いこまれそうな黒い瞳。「一度…食事しませんか?もう少し萩原さんのこと、知りたいです」「おお。いいよ。なんだ、断るつもりかと思ってた」冷たく固い表情から、少し柔らかさが見えた。微笑まれると嬉しい…「週末、俺セミナーだから終わったら飯食いに行こう」「はい。じゃあ、連絡先教えてください」携帯を出し合って、お互いの連絡先がメモリに...

ラピスラズリ 104 飾らない

何もつけていない素の爪に戻った。飾らないネイルも悪くない。呼吸ができるようになった。外したら、不思議と心も迷いがなくなった。自分を鼓舞するためにつけていたのに外してホッとしているなんて、おかしいけれど。あのあとから天野さんは私を避けるようになり特に何もされることはなかった。田島さんに注意されたのかもしれない。私にも非があった自覚があるので申し訳なかったけれど、ここには仕事をしに来ているのだ。自分に...

ラピスラズリ 103 迷ってるなら

ネイリストさんは佐伯さんと言った。年齢は私と同じだそうだ。友達も、元彼も、後輩も、岡田さんも、みんな結婚か…そう思ったら、天野さんに人前で怒鳴られたり田島さんにときめいている自分は何に向かっているのか見えなくなる。人と比べたって仕方ないけれど。佐伯さんは、「開店したらメールでお知らせしますので、近くまで来られたらお立ち寄り下さい」と言っていた。なかなか行けないことをお互いわかってはいるがこれで終わ...

ラピスラズリ 102 ネイルオフ

そうやって、田島さんに冷やかされると微妙な気持ちになるな。胸が痛む。帰り道、ネイルサロンの前を通った。空いていそうだったらオフをお願いしようと思ったからだ。幸い、お客さんが途切れた時間帯だったらしく、快くオフしてくれた。少し爪を休ませたかったからだが、ネイリストさんはこう言った。「山下さん。私、結婚することになりまして、このお店たたんで地元に帰ります」岡田さんに続き、ネイリストさんまでご結婚?旦那...

ラピスラズリ 101 相合傘

「ありがとうございます、そんな風に言ってもらえて…」「うん。だから、辞めないで。じゃあ戻るよ、俺」「はい。じゃあ、私も…」一緒にお店を出たら、通り雨が降っていた。持っていた折りたたみを広げると、田島さんが「俺も入れて」と傘に入って来られて驚いた。「傘狭いな」「狭いですね、小さいから…」「貸して」ひょいと持ち手を取られた。傘の中で腕が当たり、田島さんの煙草の匂いがする。見上げたら目が合ったので慌てて俯...

ラピスラズリ 100 一緒に仕事がしたい

「天野が悪いだろ。女の子に恫喝するような男ダメだろ」「………」田島さんは煙草を取り出した。「ちょっと吸っていい?」と聞かれたので私の手元にあった灰皿を差し出した。「とりあえず様子見るよ。何か困ったことあったらすぐ教えて。度が過ぎるようなら人事にも伝えるから」人事に?「いえ、私が辞めればいいことなので!」社内で大事にしてほしくなくて、口を挟んだ。私のせいで天野さんが処分されたりしたら。と思ったのだけれ...

ラピスラズリ 99 ホットサンド

いつも朝来るカフェに、夕方田島さんと入る。カフェというより、喫茶店に近い趣きだ。「腹減ったから食っていい?」と田島さんが言うので、どうぞと頷いた。頼んでいたのはホットサンドとコーヒー。私はミルクティーにした。「山下さんも食う?」「え」「ほら」田島さんは、半分を渡してくれた。受け取ってしまったので、口に入れてみた。「…おいしいです」「だろー?」自分が作ったものでもないのに、自慢げな田島さんに笑った。...

ラピスラズリ 98 小さな意思表示

すごく突き離されたような気分になった。引き寄せたり突き離したり。萩原さんにはそんな自覚はないのかもしれないけれど。簡単に翻弄されている私は情けない…仕事がひと段落して、時計を見上げた。今日は業務が立て込むこともない。ネイルはもうそろそろオフしたほうがいいな…次の予約をしなければ。名刺作らなきゃ。専用用紙をセットして印刷。片手間にできる作業だけれど無心になれるから好きだ。裁断を終え、田島さんの机上に置...
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