Clarice Fantasy

大人の女性向け恋愛小説置き場。たまにR-18
           

ラピスラズリ 307 砕け散る

暴力的なシーンを含みます。苦手な方は読まれないようにお願いします。--------「もう……私は会う事はありません。仕事で顔を合わせることも…」「なぜ?そう言い切れるの」佑香さんは涼やかな瞳を上げ、冷たげな表情で私を見た。「海外事業部に異動になりますし…」「隼人が?」「はい。シンガポールに……4月以降…」失言したと思った。佑香さんは、さっきと打って変わって苛立たしげにカップを置く。転勤のことなんて、浮気相手から...

ラピスラズリ 306 写真

田島さんのマンションとは違う。ダイニングに下げられたおしゃれなライトや、キッチンに並ぶ調理機器。どこもかしこも、奥さんの趣味が入っている。今座っているこのテーブルも…奥さんの趣味なのかな。この二人は夫婦で、それは当然のことで。私は、なんてことをしてしまったんだろう。浅くなる呼吸を整えようと、口元に手を当てる。「見て」奥さんが、テーブルに一枚の紙を差し出す。私と田島さんが、マンションに入って行く写真...

ラピスラズリ 305 くもり空

翌日、田島さんは終日外出だった。顔を合わせないで済んでよかった。できれば、転勤まで会わないまま過ごしたい。彼を好きだった気持ちが薄らぐまで。定時を過ぎ、仕事を終えて、いつものように退勤した。雨が降っているので、傘を差そうとくもり空に向ける。ちょうどその時、女性に声を掛けられた。「山下瑠璃さんですか」エントランスの脇にきれいな女性が立っていた。スタイルが良くて、体のラインの出た服を着て、私をまっすぐ...

ラピスラズリ 304 最後の夜

「好きだよ、瑠璃。俺はずっと、好きでいるから…」震えるような声がして、ぽたりと頬に涙が落ちてきた。はっとして見上げたら、田島さんが、泣いていた。私は、手を伸ばして田島さんの睫毛に触れた。私だって、ずっと好きでいる。私だって……「う……ううっ……うぅ……」途端に、堰を切ったように涙が溢れて、静かに涙を流す田島さんも、唇を噛みしめる。「瑠璃。次のクリスマスイブの夜、気持ちが変わってなければ駅前のツリーの前で待...

ラピスラズリ 303 引きちぎれるように

「すぐには行かないよ。4月から海外事業部に移って、それからずっとシンガポールだって。12月の終わりに一度帰ってこれるらしいけどね」転勤……海外……ピンとこない……田島さんも口数が少ない。その横顔を見ながら、どうにもならないやるせなさを覚えた。もう…会うべきではないんじゃないの?これで、終わらせるべきなんじゃないの?今日が……最後の終わらせるチャンスかもしれない。いくら好きでも、だめなことってあるんだよ。「田...

ラピスラズリ 302 決断

「…聞いたの」「何がでしょうか」「俺の異動の話」「……何がでしょうか」もう、会えなくなるかもしれないのに、こんな言葉しか出てこないし、笑顔も見せられない。「田島、ミーティング行くぞー」楠さんや梶さんが、会議室に向かい始めた。田島さんは「また連絡する」と言い残して、彼らの後を追って行く。連絡されたって。もう、会えなくなるじゃない。私の出る幕なんて、どこにもないじゃない。仕事が終わる頃、LINEが入っていた...

ラピスラズリ 301 体の関係

仕事が手につかない。4月からは田島さんと離れる。シンガポールにいつまで行っているのかもわからない。いや、期間が問題なんじゃない。待っていたい気持ちはもちろんあるけれど、私は、待てる立場にもないのだ。「おはよう」田島さんが出社した。楠さんや他のメンバーが、田島さんに声を掛ける。シンガポールという単語が聞こえてきて、耳を塞ぎたくなった。田島さんは笑いながら、みんなと話している。田島さんは、きっと、前か...

ラピスラズリ 300 内示

お返しにもらったネックレスはつけられなかった。どんな顔して選んでくれたのかな。想像すると、嬉しくてやっぱり切なくなる。「おはようございます」3月半ばの朝。事務所に着くと、楠さんが近づいてきた。「4月から社員になるんだね!びっくりしたよ」そう言えば、今日は内示日だ。採用の件は、この日部内だけには通知することになっていた。「あっ、そうなんです。未熟ですが、よろしくお願いします」深々と礼をすると、楠さん...

ラピスラズリ 299 3月

「妻とは別れるつもりだよ」そんな台詞、フィクションの世界や、自分と関係のない場所でしか聞いたことがなかった。友達の友達が、不倫してて…とか、そういう。別れ話していても、別れると決まったわけじゃない。本当のところは、私にはわからない。私たちが、こそこそと会っている今にも奥さんは帰りを待ち侘びているかもしれないのに。冷静になればそう思うのに……渦中にいると、田島さんと二人でいると何も見えなくなって、二人...

ラピスラズリ 298 私次第

「立場?」田島さんの瞳が陰る。こんなところまで来ておいて淫らに抱きあっておきながら、興ざめな発言をして…つくづくどうしようもない私。「別れ話はしてるよ。山下さんのせいじゃないよ。元々、うまくは行ってないからね」「……」「信じるかどうかは、山下さん次第だけどな」田島さんはベッドに腰掛け、煙草を取り出し、シュボッと音をさせてライターをつける。信じるかどうかって……そんな話……何も言えずにいると、田島さんが立...
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